こんにちは、認知症ZEROです。

スマホやSNS、そしてAIを使いこなすほど「効率よく生きられている」ように感じていませんか。

でも、その便利さの裏側で、脳が本来使うべき力を使わないまま長期間過ごしてしまっているとしたら――。

今回は、スマートフォンと認知症の関係について、船木先生に伺いました。

※本記事の内容は、船木先生の長年の臨床経験に基づく見解です。特定の研究データに基づくものではない点にご留意ください。

1スマホでの体験は「感じる・考える」体験にならない

0:03頃/スマホを見つめる様子
船木先生

船木先生

「深く感じたり考えたり感動したりっていう体験は物理的にスマホじゃ無理だと思ってます」

対面で人と接して、時間を共有して生まれるものの方が、その後にも残るものが大きい。

ついつい見ているだけで「感じている」ように錯覚しがちですが、実生活で人と対峙して感じるものとは比べようもないレベルの思考しか、スマホの中では使われていません。

この差が長いスパンで積み重なると、脳に蓄積したダメージとして、いつか結果になって出てくるのではないか。そう感じさせられます。

2失敗しない経験が脳に不安を蓄積させる

1:06頃/悩む表情のイメージ

人間は、辛くて疲れて、時に痛みを伴うようなことでも、感じて考えて「こうしよう」「失敗した」を繰り返しながら前に進んでいく生き物です。

試験のように失敗をやり直せることもあれば、一生残るような後悔につながる失敗もあります。

それでも前に進まなければならない、その一瞬一瞬の処理の積み重ねこそが、振り返れば自分自身であり、人間そのものです。

これをすべて省略して、たとえばAIに「告白したいけどどうしたらいいか」と聞いて、失敗せずに成功だけをつまみ食いしようとするとどうなるか。

考えて、感じて、恥をかいて、失敗するという大事な経験をしていないことを、脳自身が何よりも恥じるようになります。

それはまるで、試験でカンニングをし続けているような状態です。

船木先生

船木先生

「私たちの結構な自信っていうのは、俺がこれでいいんだっていうのは、僕自身は失敗が土台になってると思うんですよ」

木曽さん

木曽さん

「でもその失敗すらしてないっていうとんでもない不安ですよね」

今の若い人たちの中には、スマホやSNSを駆使してうまく稼げたことを誇る人もいます。

ですが脳は、5年先、10年先に「うまくやれたかな」ということばかりをつまみ食いしてきた自分に対して、「何の時間を過ごしてきたんだろう」という後悔や空虚感を、一気に感じ取ることがあるのではないかと思います。

3脳は「なかったこと」にするために記憶を消しにかかる

3:33頃/記憶がぼやけるイメージ

そうした空虚感や不安が押し寄せると、脳はさらにレベルの高い機能を使って、その過去を忘れようとします。

苦労もせずに楽をしてきたという事実そのものを、もともとなかったことのように処理しようとする可能性があるのです。

誰に言われたわけでもないのに、自分で自分のことを認められない状態は、人間として耐えられません。

人から何か言われても「お前こそどうなんだ」で済む話ですが、自分には嘘がつけません。

自分に対する認識そのものへの自信が持てなくなってしまうのです。

そうなると、記憶を自分で消しにかかります。

完全に消去するわけではなく、簡単には取り出せない場所にしまい込んで、鍵をかけるような状態にしてしまう。

これは認知症の1つのタイプに当たるのではないかと感じることがあります。

知的な仕事を長年してきたはずなのに、なぜこうなってしまったんだろうという方が、たまにいるのです。

スマホが大きな原因になっている認知症は、まだ表に出てきていないと感じています。これから出てくるものだと思います

脳の神経組織は壊れてもそれを直す力(神経可塑性)を持っていますが、その回復力を超えてなお病気が進行していく期間は、およそ30年かかります。

スマホが普及してから今でおよそ30年。その影響が本格的に表れてくるのは、今から10年先、20年先ではないかと考えています。

4手書き・対面のやり取りが人間関係と脳を育てる

8:16頃/紙の本や手紙のイメージ

こうした理由から、できるだけ紙の本を読むようにしています。

電子書籍は一切読みません。

ブルーライトの影響もありますが、それ以上に、手で触れるという体感を含めた総合的な情報量は、紙の本の方が多いのです。

紙の本には、それを書いた人と対話しているかのような近さを感じさせる何かがあり、人間の脳はそれを感じ取るようにできています。

江戸時代の寺子屋では、手紙の書き方が特に重視されていました。

偉い人の手紙を手本にして、とにかく手紙を書けるようになることが目的とされていたのです。

もらった側の気持ちを考えると、スマホを通した文面より、手書きで送られた方が気持ちは伝わります。

人を説得する、謝る、そうした場面でどういう字の書き方をすれば人間関係が円滑にいくかを徹底して教えていたのが、寺子屋でした。

ネットで検索すれば、お礼の文章や謝罪の文章はいくらでもコピーできます。

ですが、フォーマットの文面だけを貼り付けてあて名を変えるようなやり方では、相手にもすぐ伝わってしまいます。

1つ1つ感じて考えながら人間同士でうまくやっていこうとする、その大事な関係を築くチャンスを、私たちは失い続けているのかもしれません。

5AIに悩みを打ち明ける時代のリスク

10:52頃/スマホでAIに話しかけるイメージ

さらにAIが加わることで、状況はより複雑になってきています。

「1週間何を食べればいいかAIに聞く」という人も出てきていますし、知人の中には「友達がAI」だと話す人もいました。

木曽さん

木曽さん

「AIってどうやって使ってるのって聞いたら、人に言えないことをAIだけがうんうんって聞いてくれるからって」

船木先生

船木先生

「これちょっと大変な時代になってきましたね」

AIに向かって声で話しかけるのは、たいていパソコンではなくスマホです。片手で持てて声も発しやすい、その手軽さがまた、便利さの罠になっています。

6スマホは脳のマルチタスクを錯覚させているだけ

11:44頃/複数の通知が来るスマホ

スマホの怖いところは、どこでも、いつでも、どんどん割り込んでくることです。

私たちの脳は本来マルチタスクができません。

計算をしながら漢字ドリルをしながら作文の宿題をする、というようなことは、絶対に3つ同時にはできず、実際には計算なら計算しかできないのです。

ところが今の社会は、あたかも3つも4つも同時にこなしているかのような錯覚をさせる仕組みができ上がっています。

実際には頭の中でできていないので、処理が飛び飛びになり、記憶として残らないのです。

船木先生

船木先生

「ペンを持って鉛筆持って紙に何回も迷いながら答えを書いて、間違ってる、なんで間違ってるんだって腹立ってきて消しゴムやって、ノートが破れたりとかっていう、その体で覚えてる体験って、全く生まれないんですよ、そこでは」

木曽さん

木曽さん

「確かに。深くちゃんと集中してやれてないから、残らないんですね」

腹が立つ、できない自分にイライラする

――そうした感覚も、スマホの中では生まれにくいものです。

一方で、誰かからもらった一言のメモに感動する、といった体験もまた、スマホでは得られません。

仮に似たような感動を人工的に演出できたとしても、それは人のぬくもりが宿らない、作りものの快楽にすぎないのです。

7便利さと脳の健全性は両立しない

13:15頃/便利さと脳への負荷を象徴するイメージ

本当に便利さを追求しようとすると、脳にはある程度の負荷をかけなければならない、という一見矛盾するアプローチが必要になります。

ですが今の時代は、「便利」という正義を振りかざしてどんどん進んでしまっています。

スマホを通して入ってきた知識は、正直なところ固定されません。つまり、あなたの知識にはなっていないということです

「英語も日本語も覚えなくていい、そのうち全部AIが代わりに喋ってくれるからいい」という考え方もありますが、そうした生き方に、私たちの脳はまったく追いついていませんし、変化もしていません。

本来のあり方から自分自身を守ろうとする脳の使命から考えると、その変化を脳は決して許さないはずです。だからこそ、それを排除しようとします。

そして最も恐ろしい形で現実に起きうるのが、「なかったことにする」「全部忘れてしまう」という排除の仕方です。

それが認知症の症状として現れた時には、もう手遅れなのです。

スマホの便利さ自体を今さら手放すことはできません。

だからこそ、スマホを通して入ってくる情報が、私たちの体の中に本当に取り込まれているわけではないということを、まず知っておくことが大切です。

世に出回る情報の多くは、お金儲けをしている人たちの宣伝の手段になっているケースがほとんどで、CMもなしに一生懸命ニュースを届けてくれる人などいません。

次も見たくなるような仕掛けが、必ず施されているのです。

そういうものだと俯瞰して見ておくこと。

そして、気持ちのすべてをそこに寄せないようにすること。

必要な苦労や手間、それを乗り越えた先にある感動

――そうしたものは昔から変わらず大切なものであり、その向き合い方を今、あらためて見直していく必要があるのではないでしょうか。

💡まとめ

  • スマホでの体験は対面での「感じる・考える」体験の代わりにはならず、失敗を経験しないまま成功だけをつまみ食いすると、脳は将来的な不安・空虚感を蓄積する
  • 脳は耐えられない事実を「思い出せなくする」形で処理しようとすることがあり、これが認知症の一因になりうる可能性がある
  • スマホが主要因となる認知症の影響は、これから10〜20年でより明らかになってくると考えられる
  • 紙の本や手書きの手紙など、手間のかかるやり取りが人間関係と脳を育てる
  • 脳は本来マルチタスクができず、スマホの通知や切り替えは記憶の定着を妨げる。便利さの追求と脳の健全な負荷は両立しにくく、情報の受け取り方を俯瞰して見直すことが大切

本記事の内容はこちらのYouTube動画でお話ししています。

スマホとAIが当たり前になった時代に、脳がどのような影響を受けていくのか。船木先生が実感を込めて語っています。ぜひご覧ください。

※本チャンネルの内容は、医療・健康に関する情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療・予防効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合や治療中の方は、必ず医師など専門家へご相談ください。