こんにちは、認知症ゼロです。
「最近なんだか様子がおかしい」
「これって認知症の始まりなのでは」
と、家族の変化に不安を感じたことはありませんか。
今回は、船木先生に認知症の可能性を示す日常の変化について伺いました。
結論から言うと、ご本人が自分の異変に気づいて相談に来るケースはほとんどなく、家族が「いつもと違う」と感じたことがきっかけになる場合がほとんどです。
今回はその「気づきのポイント」を前編としてまとめます。
※本記事の内容は、船木先生の長年の臨床経験に基づく見解です。
1ご本人は気づかない、家族が気づく


木曽さん
「自分自身であったり、身内家族であったり、認知症になっているかもと判断する基準になるものがあると、結構助かるなと思うんですけど、その辺りいかがですか?」

船木先生
「大体の場合はですね、最近物忘れが増えたとか、家族の方、パートナーの方が『今まであの人こんなことしなかったのに』ということで心配になって、医療機関に連れてこられることが多いんです。ご自身で『最近物忘れがひどいんだよな』ということで来ることは、まずないんですよ」
自分が衰えていく可能性を、人はなかなか受け入れられないものです。
気持ちの上ではいつまでも若いままでいたいという思いが誰しもあり、それは自分の親についても同じことが言えます。
親の年齢を意識するタイミングというのは、実は「親がまだ若かった頃」のイメージのままどこかで止まってしまっていることが多く、これは自分自身の年齢に対する認識が止まっていることの裏返しでもあります。
だからこそ、久しぶりに実家に帰った際などに「なんでこんなことをしているの」という驚きが強く出るのです。
これは認知症の症状に準じる行動の場合もあれば、単なる段差でのふらつきなど、加齢に伴う変化の場合もあります。
2夫婦喧嘩で「言い返せなくなる」変化

日常の中で本人の変化が最も分かりやすく表れるのが、感情がぶつかり合う瞬間です。
船木先生
「例えば夫婦だったら、『いい加減にして、あんたボケちゃったんじゃないの』みたいな話になるんですよ。そうすると大体プライドがあるので『ふざけるな』と。
ただ、その後に論理的な説明ができないんです。『お前だってこういうことあるだろう』と言おうとしても、その内容が出てこない」
喧嘩というのはあらかじめ計画してやるものではなく、突発的に起こるものです。
「こう言われたらこう言い返そう」というシミュレーションが自分の中でできていないため、とっさに言葉が出てこない。
昔はあれだけ言い返してうるさかった人が、最近は何も言い返してこない
――この変化にパートナーが気づくことが多いのです。

木曽さん
「僕は基本妻には反論しないんですけど、それって評価が下がってるってことなんですかね」

船木先生
「反論しない時点で終わってるんじゃないですかね」
普段の生活の中では分かりにくくても、感情がぶつかり合うような場面になって初めて、言語化する力や理屈を戦わせる力が落ちていることが表面化してきます。
3おとなしい人ほど気づきにくいサイン

一方で、感情をあまり表に出さないタイプの方は、変化に気づかれにくい傾向があります。

船木先生
「元々すごくおとなしい人で、ずっと誰にでも優しくて、家族にもニコニコして、怒りだとか自分の思いをぶつけてくるようなタイプでない人は、分かりにくいんです」
そうした方の場合、感情面の変化よりも、トイレの使い方やお金の扱いといった具体的な行動の変化から気づかれることが多くなります。
4お金・火の扱いに関するトラブル


船木先生
「ATMで今お金を取らないでとか、スーパーで買ったものを袋詰めするところで、その中身を全部置いてくるとか。これは本当に多いですよ」
お金や火の扱いに関わることは、命に直結する問題です。
根本的な重要性はご本人も本来理解しているはずですが、それを失念してしまったり、ミスをしてしまったりするというのは、そこに対する意識そのものが薄れてしまっている状態と考えられます。
普段おとなしくて穏やかなタイプの方は、こうした場面で変化に気づかれることが多いのです。
家族から見て最も分かりやすい変化として挙げられがちな「怒りっぽくなった」というのは、実はあまり聞かれません。
むしろ逆で、
✔️ 元々感情的になりやすかった人が何も言い返してこなくなる
✔️ お金や火の扱いにまつわるトラブルが増える
✔️ トイレ関係のトラブルが増える
といった変化の方が多いということです。
5トイレや料理の「順序」が崩れる


船木先生
「排泄行為があった後、お尻を拭かないでパンツを履いてしまう。普通はトイレに入り、便座を下げて、パンツを脱いでから座りますよね。その順序がうまくいかなくなることがあるんです」
人間の行為というのは、当たり前にできる一連の動作の積み重ねです。何も考えずに、無意識のうちに正しい順序で行われています。

船木先生
「料理が得意だった方でも、スーパーでカレールー、じゃがいも、にんじん、玉ねぎを買ってきて、材料を並べて、下ごしらえをして……という順番のどこか一つが入れ違ってしまうと、うまくいかないんですよ。実際、鍋に油を入れずにいきなりカレールーを落としてしまうといったことが起こります」

木曽さん
「それはもう焦げて終わりですよね」

船木先生
「そう、ただ焦げるだけです。ただ、その順番が分からなくなってしまう」
普段の言動からは変化に気づきにくい、おとなしく上品な方の場合、特に「お母さんのこの料理、味がおかしい」というところから気づかれることも少なくありません。
カレーを作っているはずなのに、カレー粉が入っていない――最も重要な工程が抜け落ちてしまっている状態です。
こうした変化は、ある日突然大きく表れるというよりも、「最近なんだかおかしい」という違和感が積み重なった末に、「1週間前にこんなことがあったんです」という具体的なエピソードとして語られることが多いというのが、船木先生が診察の現場で繰り返し感じていることです。
💡まとめ
- 認知症の始まりは、ご本人ではなく家族が気づくケースがほとんど
- 夫婦喧嘩などの場面で、言い返せなくなる変化に気づかれることがある
- 感情を表に出さないおとなしいタイプの方は、行動面の変化(トイレ・お金の扱いなど)から気づかれやすい
- お金や火の扱いに関するミスは、命に直結するため特に注意したいポイント
- トイレや料理など、当たり前にできていた動作の「順序」が崩れることも一つのサイン
本記事の内容はこちらのYouTube動画でお話ししています。
船木先生が、診察の現場で実際によく聞かれるご家族からの相談内容をもとに、認知症の初期に見られる日常の変化について詳しくお話ししています。ぜひご覧ください。
※本チャンネルの内容は、医療・健康に関する情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療・予防効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合や治療中の方は、必ず医師など専門家へご相談ください。