こんにちは、認知症ZEROです。
スマートフォンを触っている時間、1日にどれくらいあるか意識したことはありますか?
気づけば通知を確認し、気づけば時間が経っている
——そんな感覚に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、船木先生にスマートフォンと脳の関係について伺いました。
結論からお伝えすると、スマホは「注意」「睡眠」「記憶」という、脳の根幹的な機能に直接影響を及ぼすことがすでに分かってきています。
そしてその先には、私たちが「自分らしさ」を保つために欠かせない、記憶や感情の働きそのものが失われていくかもしれないという、長期的なリスクも潜んでいます。
※本記事の内容は、船木先生の長年の臨床経験に基づく見解です。
1スマホがなかった時代との違い


船木先生
「私たちはスマホがなかった時代を、普通に経験してきているじゃないですか」
スマートフォンが広く使われ始めたのは、ここ20年ほどのことです。
今の中学生や高校生にとっては、スマホがあることが当たり前の環境で、授業を休んでも「後で友達に聞けばいい」という感覚すら生まれています。
以前は、授業に出られなかった時はノートを借りて、コピーを取って、手で書き写す。
そうした手間をかけながらテスト対策をしていました。
今はスマホで写真を撮る、PDFを転送するだけで済んでしまいます。
この便利さ自体は、決して悪いことではありません。

船木先生
「もし悪いことだけだったら、多分普及せずに終わったと思いますからね」
便利になった一方で、24時間いつでも仕事や連絡が入り込んでくる環境も、同時に作られてしまいました。
学校が終わって家に帰り、自分の好きなことをしている時間に誰かが割り込んでくる、ということは以前はほとんどありませんでした。
今は夜中でも、お風呂に入っている間でも、通知が入ってきます。
2スマホが脳に及ぼす3つの悪影響


船木先生
「今もうすでに科学的な研究で分かってきていることは、スマホの悪影響です」

木曽さん
「これは今伺った悪影響というのは、全て脳に対するダメージという認識でいいんですか?」
具体的にどこに悪さをしていくのか、船木先生は3つの機能を挙げています。
- 注意(アテンション):物事に集中して注意を向ける機能を妨げる
- 睡眠:明らかに睡眠を妨げる
- 記憶:記憶を保持する機能そのものを邪魔する
スマホは、脳が持つ「注意」「睡眠」「記憶」という基本的な機能に、直接的に悪影響を及ぼすことが分かってきています。
ただし、脳は単純に「全体としてこう」と一括りに捉えられるものではありません。
部分部分にどんな悪影響が及んでいるかをつなぎ合わせていって、初めて評価ができる段階にあります。
3なぜやめられないのか|脳の報酬系という仕組み


木曽さん
「じゃあ、やめろよっていう話にもなりますよね」

船木先生
「それが難しいでしょうね。そこに感じている根っこにあるものは、脳が持つ報酬系というものなんです」
いい気持ちになりたい、いい思いをしたい
——そうした快楽の感覚を、スマホは巧みに刺激するように設計されています。
例えばメールやメッセージを送ったら、すぐに返事が返ってくる。
それによって「自分はそれなりの力を持っているんだ」という承認欲求が満たされていきます。
この仕組みが、あちこちにばらまかれている。
便利になったはずが、いつのまにか自分自身を縛るものになっているのです。
相手に求めるものが多くなればなるほど、それが返ってこなかった時のストレスも大きくなっていきます。
4些細なことで怒る人が増えている理由


船木先生
「私たちが持ってる『これが自分だ』『これが人だ』というありようは、記憶だったり、感情だったりするんですよ」
感じて、覚えていて、思い出すことができて、そして思い出をいつも思い出しながら生きることができる。
そうしたレベルの高い、幸せな時間を私たちは日々紡いでいます。
ただ生きているように見えても、その時その時に感じ、考え、行動し、時には後悔し、失敗して「ああしなきゃよかった」「悲しいな」「辛いな」と感じたことも含めて、すべてが記憶に残っていきます。
それを行ったり来たりしながら、自分というものがずっと繋がり、形成されていくのです。

船木先生
「自分を紡ぐための記憶とか、感情の動きとか、喜びも悲しみも満足したりとか、幸せだなって感じたりするものが、どんどん失われていって、私はもうなくなるんじゃないかなと思っています」

木曽さん
「何がですか?」

船木先生
「感情も、思考もですね。うわ、でもちょっと今その傾向、出つつありますよね」
その兆候は、すでに身近な場面に表れ始めています。

船木先生
「何を怒っているんだろうっていう人、見ませんか? コンビニとか、駅の窓口だとか」

木曽さん
「見ます」
怒るという行為は、実はかなりのエネルギーを消耗します。
それを上回るメリットがなければ、普通は怒らないはずです。
つまり「これは言わなきゃだめだ」という一定のラインが、以前はありました。それが今、限りなく低くなっています。
店員さんの説明が長かった、公共料金の払い込み用紙をちぎる場所を間違えた
——よく考えれば、最終的にはちぎるのだから問題ないはずのことでも、即座に怒りに変換されてしまう。

船木先生
「もはや脳のフィルターを通ってないんですよ」
普通なら「まあ、そこまで怒ることじゃないよ」と誰かが止めるものですが、スマートフォンには、その場で自分を止めてくれる人がいません。
SNSでも同じで、匿名の投稿がある瞬間に殺到するような現象が起きるのは、この「止める人がいない」という構造と無関係ではありません。
5人と関わる中で育つはずの「感じる力」が育たなくなる


船木先生
「人ってね、感じる、考える、こうすべきだって腹落ちしてから行動するっていうことを繰り返していくうちに、人との距離感がわかっていくんですよ」
自分の喜びや悲しみを経験しながら、同時に人の喜びや悲しみも感じる。
そしてその時に、相手とどういう距離を保ち、どんな言葉をかけるかということを、ずっと経験しながら積み重ねていく。
これが人間らしさを育てる過程です。

船木先生
「スマートフォンだと、生身の人間同士の接点が全くいらないんです」

木曽さん
「そっか。じゃあ、匿名だからというより、生身のやり取りがないこと自体が問題なんですね」
厳密には匿名ではなく、誰が発信したかは分かる仕組みであっても、
「これくらい言ってもいいだろう」
「自分にはそれを言い任せるスキルがある」
という万能感が生まれやすくなります。
自分が考えた、自分がこうまとめたという感覚は錯覚しやすいものであり、実際には自分自身の言葉になっていないことも少なくありません。
相手がこうされたらどう感じるだろうか、この人はどんな思いを抱えてきたのだろうか
——そうした想像する力が、育たないどころか、どんどんゼロに近づいていく。
対人関係の中で積み重ねる苦労や思考の機会が、あらゆる場面で軽減され、失われていくことは、脳にとって良いことではありません。
感じる、考える、腹落ちしてから行動する
——このプロセスを繰り返すことこそが人間らしさであり、それが失われていくということは、自分からその力を放棄してしまっている状態とも言えます。
その先に何があるのかと言えば、人間らしさそのものが失われてしまうことです。

木曽さん
「やっぱり脳は必然を持って、動かす宿命にあるということですね」

船木先生
「そうです。その動かさなければいけない作りのものを、スマートフォンは動かなくてもいい環境にしてしまっているんです」
💡まとめ
- スマホは脳の「注意」「睡眠」「記憶」という基本機能に直接的な悪影響を及ぼすことが分かってきている
- スマホは脳の報酬系(承認欲求など)を巧みに刺激するよう設計されており、依存しやすい構造になっている
- 生身の人間同士の接点が減ることで、相手の気持ちを想像する力や、感情をコントロールする力が育ちにくくなる
- 感じる・考える・腹落ちして行動するという経験の積み重ねが失われることは、記憶や感情、ひいては「自分らしさ」の喪失につながりかねない
本記事の内容はこちらのYouTube動画でお話ししています。
船木先生が、スマートフォンと脳の関係について臨床経験を交えながら語っています。ぜひご覧ください。
※本チャンネルの内容は、医療・健康に関する情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療・予防効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合や治療中の方は、必ず医師など専門家へご相談ください。